鈴木 |
もう禁煙してないんでしょ。 |
糸井 |
してない。禁煙して禁断症状のときに、
仕事しちゃだめだなんだよ。
人に会う仕事ばっかじゃない?
会議とかしてたってさー、へろへろ声で、
「僕にゃ〜〜」
とか言ってさー(笑)。
だから、禁断症状のときに、自分を隔離しないとダメ。
禁断症状で暴れるようなことはないわけで、
ただ、「(自分が)バカだー」
ってことに対する嫌悪感があるのよ。 |
鈴木 |
ああ、頭の回転スピードが遅い、
っていうことに対する嫌悪感ね。
「はーやーいーはーなーしーがーーー・・・・・・」
みたいなね(笑)。 |
糸井 |
(笑)それそれそれ。
敢えて言うなら、
速さ失ったら俺じゃないからね、もはや。 |
鈴木 |
(糸井さんは)速いからねー。 |
糸井 |
ショトカットの連続で生きてきた俺がよ、
「ええーー、と言うのは・・・・・・」
とか言ってんの。それは辛かったぜー(笑)。
1個ずつ分解して物を考えて、
ブロックを積み上げるようにしていかないと
(結論に)辿り着かないの。 |
鈴木 |
そこまで行くんだ、たばこって、やめると。 |
糸井 |
すごいよ!
感動的ですらある。そのバカさが。
で、自分にいらだつから、怒りっぽくなるの。
そう言えば、俺、幕張でのイベントで
司会者にものすごく切れたのね。
それよく考えてみたら、たばこ切れてたからだ!
「お前のようないい加減な人間とは、
一生会いたくないっ」
とか言って。 |
鈴木 |
うわーーー。 |
糸井 |
あそこ会場が禁煙になってるじゃない?
そこで、バカ(=司会者)が
いい気になってやってるから、
「バカめ」っていうのがつい出ちゃって、
しゃべってる間は大丈夫だったんだけど、
終ってから爆発しちゃったの。 |
鈴木 |
幕張って確か全部禁煙なんだよね。 |
糸井 |
中は全部ダメ。 |
鈴木 |
なんで“禁ずる”かねー。 |
糸井 |
それはねえ、“禁煙”って言葉がよくないのよ。
ニコチン麻薬中毒患者のリハビリテーションとして
とらえないと。
禁煙セラピーはねえ、ほんとは役者を使って、
その人との信頼関係をもっと上手に作って、
「ああそうだなぁ、ほんとにそうだなぁ」
って思わせなきゃダメだよ。 |
鈴木 |
まず門前で疑うよね(笑)。 |
糸井 |
俺ら、海千山千なんだからさ(笑)。 |
鈴木 |
(笑)そりゃ、行く方も、はじめから
「吸ってたら死んじゃう」
みたいな気持ちで行ってれば、
(セラピストと受講者が)
合致してうまくいくだろうけね。
「ああ、そうだと思ってたんですよ!」
とか言ってね(笑)。
見事に入り込める。 |
糸井 |
変な話、柳生博みたいな人が出てきてさ、
どこかの部屋に集めて、
「さあ、みなさん心おきなくお吸いください」
なんて言って、部屋中モクモクになったところで、
「さて・・・・・」
とかはじるとかすればね、まだね(効果があった)。 |
鈴木 |
要するに、役者だね。 |
糸井 |
そう、だから、
「これは役者雇って、俺が全部脚本書き換えてやれば、
ビッグビジネスになるな」
って思って、そんなことばっかり考えながら
やってたんだけど、
それを友達に言ったら、
「つまんないじゃないですかっ」
って(笑)。
確かにそんなことで儲けても面白くないよな(笑)。
その友達ってね、時々、俺がランランランって
間違った旅に出ようとすると、
その船を沈めようとするの。
「穴開けちゃいましたよ」って(笑)。
で、その本人の禁煙に至る話がけっこういいんだよ。
彼は社長さんなんだけど、
社員に事業計画を出させたら、
みんなつまんないんだって。
つまんないし、できることしかやってないんだって。
「つまんないじゃないか」
って重役も含め、社員全員に言って、
「要するに、できることとできないことがあって、
できないことは不老不死だ。
どんなにがんばってもできないんだ。
それはできないこととしてみんな認めるべきだ。
でも、できなそうに見えて
できることってあるんだよ。
たとえば、タバコやめるようなことはできるんだよ」
って言ったら、みんながうつむきかけていたのに、
はっと顔上げたんだって。
で、そこで、「きたーっ」って思ったんで、
ポケットからタバコ出して、
パーンっと捨てたんだって(笑)。
で、
「これ(禁煙)は
みんなできないと思ってることだけど、
できることなんだよ」
って言って、そう言った手前、やめたんだって。 |
鈴木 |
カンタンにやめられたの。 |
糸井 |
それがね、すぐ旅に出たの。
南の島に行って、3日間ゴルフしてたんだよ。 |
鈴木 |
仕事はしなかったんだ。 |
糸井 |
仕事はできないって、やっぱり(笑)。
「(禁断症状で)絶対考えを誤る」
って言ってた。
「だから、すぐ逃げたんですよ、飛行機で」って。
南の島行って、ゴルフ2ラウンドとか、
とにかく毎日へとへとになるまでやって、
「あー抜けたー」
って思ったら、帰りの飛行機では
全然平気になっていたらしい。
でもなあ、そう聞くと、俺、ゴルフってしないし、
釣りしてたって、一服するじゃん。 |
鈴木 |
でも、釣りしてると、本数は減るでしょ? |
糸井 |
でもね、(釣りは)うれしいっちゃー吸い、
悲しいっちゃー吸っちゃうんだよ。
雨の中でよじれたタバコとか出したりしてない? |
鈴木 |
でも、本数は減るけどなあ。 |
糸井 |
でもさ、ちょっとやめただけで、
車の中のタバコの匂いがすごいなあ、とか
そういうことには気付くんだよ。
だから、禁煙するには入院するしかないっていう
結論になったんだよ。 |
鈴木 |
でも、肺についてるのはもう取れないんじゃない? |
糸井 |
いずれ取れるらしいよ。
だんだんになくなってくんじゃなくて、
急にガクッと取れるらしい。
(いずれ取れるから)やっぱりいくつになっても、
やめた方がいいものらしいよ。
90になってもやめた方がいいみたいよ。 |
鈴木 |
あっそう。 |
糸井 |
だから、そういう(タバコを)
やめた方がいいってことの
理屈づけは痛いほどわかった。
動機はないけど、やめるべきだと思った。 |
鈴木 |
“動機はないけどやめる”
っていうのはいいですね。 |
糸井 |
うん、おしゃれ。 |
鈴木 |
“ただちょっとやめたい”。 |
糸井 |
あのねー、よくないのはわかってる。
でも、こいつ(タバコ)に俺が
支配されてるのもわかっているの。 |
鈴木 |
(笑) |
糸井 |
だってさー、買いに行くじゃん、どんなときも。
それっておかしいと思わない?
どんなにスイカが好きでもさー、
そんなしょっちゅう・・・・ |
鈴木 |
買わないわな。
「ちょっとスイカが切れちゃって・・・・」
なんて言わない(笑)。 |
糸井 |
(笑)「スイカの買い置きがなくって」
なんて悩まないだろう?(笑) |
鈴木 |
やっぱり、(タバコには)依存性があるんだろうね。 |
糸井 |
あとねえ、もう一つ好きなのは、
“ジャンキーは嘘をつく”っていうのがあって、
これは俺好きだったな。
つまりね、“おいしい”とか“すっきりした”とか
いろいろ表現はあるけど、
つまり、ヘロインをやってる人もいろいろ嘘をつくし、
借金をしに行くのにも嘘をつくし、すごいじゃん。
それとニコチン中毒者って同じなんだって。 |
鈴木 |
じゃあ、
「いやあ食後の一服がうまいんですよねー」
っていうのも嘘ついてるの? |
糸井 |
「うまくてたまらない」とは言えない。
それは俺、自分に聞いてみた。 |
鈴木 |
(笑)。 |
糸井 |
「うまくてたまらない」じゃなくて、
「吸わずにはいられない」ってことだな、
言い換えれば(笑)。
それが正しいと思う。 |
鈴木 |
たしかにそれが正しいな。
「いやあ、タバコはうまいっ」
っていうよりも、
「吸わないといられない」んだなあ。
前に、朝の1本目をやめて、
寝る前の1本目をやめると
本数が減るって聞いたけど。 |
糸井 |
ものすごく減る!
それは、つまりニコチンが減ってる状態が
長いんだよね。
だから、5時間なら5時間、8時間なら8時間寝て、
この間吸ってないじゃない。
で、朝吸わないと、吸わない状態っていうのに
多少慣れるんだよ。
だから、朝立て続けに3本吸って、
「今日は元気だ」
とかやっちゃうと、そのまま行っちゃう。 |
鈴木 |
寝てる間は代謝が落ちるもんな。
俺、寝てる間、無呼吸症らしいんだよ(笑)。 |
糸井 |
あぶない人だなあ(笑)。 |
鈴木 |
それはねえ、起きてる間の状態に近いから、
小便がどんどんできちゃう。
だからねえ、どうも毎朝、
膀胱がパンパンで目が覚めるなあ、と思ったのよ。
あんまり寝る前に何も飲まなくても。
それは、どうやら無呼吸のせいらしい。 |
糸井 |
へえ。 |
鈴木 |
もう、毎朝、
「(夢が)この話はおねしょー!?」
ってときに目が覚めるんだよ〜〜〜(笑)。 |
糸井 |
(笑) |
鈴木 |
だってさー、6時間寝ててさー、
それが起きてる状態と同じだったら
ふつう1度や2度はおしっこ行くよね? |
糸井 |
しょっちゅう無呼吸になってるの? |
鈴木 |
そうみたいよ。
だから、昼間も眠い。
ふだんもどっちかって言ったら、
トロンとしてるでしょ?
元気なときは元気だけど、
その後すぐにトロンとするでしょ。
それは、常に起きている状態だから、
(疲れも出て)動きが早くできないわけだよ。
でもねえ、無呼吸症ながらも寝るコツ覚えたね。
要するに、のどに肉がついて気道が圧迫されて、
それで呼吸ができなくなる。
だからそれを解決するには気道確保だよね。
レスキューみたいな(笑)。 |
糸井 |
体をまっすぐにして・・・ |
武井 |
枕が大事ですね。 |
鈴木 |
うん、大事。
僕は、気道確保のために片手でTシャツをつかんで、
片手はあごの下にゲンコツを作って
寝ることにしてるの(笑)。
これは先月、開発したの(笑)。 |
糸井 |
それって“あご枕”って言うんじゃない?
そんな状態で寝てたら、変な夢見ない? |
鈴木 |
見るよ。悪夢ばっかり!(笑) |
糸井 |
だめだよー(笑)。 |
鈴木 |
でも、多少は楽になってるような
気もするんだけど(笑)。 |
糸井 |
無呼吸は解決したかもしれないけど、
別のストレスがありそうじゃない。 |
武井 |
慶一さんは、すごく苦しそうな、
妙なポーズで寝ると聞いたことがありますが。 |
鈴木 |
そうなの。
たとえば、狭いところに窮屈そうに寝るとか、
僕って“マゾヒスティック睡眠”なのよ。
ずっと。若いときから。
子供のときは布団で寝てたけど、
中学くらいになってからもう布団で寝ないからね。
こたつとかさー。 |
糸井 |
「さあ、寝れるんだ」
って体制がしっかりできてると、
絶対寝れないんだよね、慶一くんは。 |
鈴木 |
絶対ダメ。
あの、だから、地方に行くときとか、
ホテルに泊らなきゃいけないときなんかは、
しょうがないから寝ちゃうんだよね。 |
糸井 |
それ直すのものすごく簡単だよ。
“寝ないの”。
とにかく寝ないと、(次の日かまた次の日には)
いずれ眠くなって寝れるようになるの。 |
鈴木 |
それは俺もわかってる。
「寝なきゃ、寝なきゃ」ってすると、
余計寝られなくなるじゃない。
そんで、布団の中で2時間経ったりするのって
無駄じゃない。
そんで、あるとき気付いて、
「無理に寝なくていいや」って。
この職業だとさー、
寝たいときに寝れるわけだしね。 |
糸井 |
この話(禁煙ばなし)はねえ、
まだしばらく俺、ライフワークにしよう。
(つづく) |